作文が書けない小学生への教え方|書き出し・構成のコツ

教科のつまずき

原稿用紙を前に、鉛筆を持ったまま動かない我が子。「何を書けばいいの?」とつぶやいたきり、10分たっても1行も進まない。「思ったことを書くだけでしょ」と言えば、ますます黙り込む——夏休みの宿題のなかでも、作文が書けないという悩みは、毎年たくさんのご家庭で繰り返されますよね。せかしても、ヒントを出しても、白いマスがなかなか埋まらない。そんな時間に、こちらの気持ちまですり減っていく。そんな経験は、あなただけではありません。でも、作文が書けないのは、お子さんの文章力が足りないからでも、あなたの教え方が悪いからでもありません。

作文は、「体験を思い出す」→「伝えたいことを選ぶ」→「順番に並べる」→「文字にする」という、いくつもの作業が重なった、大人でも骨の折れる課題です。だからこそ、お子さんが「どの段階で止まっているのか」を見きわめて、そこだけ手伝えば、驚くほどスラスラ進み出します。この記事では、中部大学 現代教育学部 准教授で算数教育の研究者でもある樋口万太郎先生(元小学校教員)の「見取り」の視点も交えながら、家庭でできる作文のサポートを、書き出し・構成のコツまで含めてやさしく整理していきます。時間にゆとりのある夏休みは、あわてず一緒に取り組める、またとない機会です。

なぜ作文が書けないのか

「作文が書けない」とひとことで言っても、つまずいている場所は子どもによって違います。多くの子は「作文の才能がない」のではなく、「どう進めればいいか」を知らないだけで止まっています。まずは、よくある4つの場所を見てみましょう。ここが分かると、声のかけ方が変わります。

① 書くこと(ネタ)が思いつかない

「今日のこと、何もなかった」「書くことがない」と手が止まるケースです。じつは体験がないのではなく、頭の中にある出来事を「これは作文になる」と拾い出す方法を知らないだけ。特別なイベントを探そうとして、身近な出来事を見落としていることがほとんどです。

② どの順番で書くか(構成)が決まらない

書きたいことは少しあるのに、どの順番で書けばいいか分からず、出来事を時間どおりに並べただけで終わってしまう。作文には「はじめ・なか・おわり」という型があります。この型を知らないまま書き出すと、途中で迷子になり、手が止まってしまいます。

③ 書き出しの一行が書けない

内容は決まっているのに、原稿用紙の1行目が埋まらない。「書き出し」は大人でも難しいところで、ここでフリーズする子はとても多いです。じつは書き出しには“型”があり、それを1つ知るだけで、最初の一歩がぐっと軽くなります。

④ 原稿用紙の使い方・表記で止まる

内容は話せるのに、「マス目のどこから書くの?」「カギカッコは?」「小さい『っ』は?」と、書き方のルールでつまずく子もいます。ここで止まっているなら、作文の中身ではなく“表記”の問題。ここは、ひとつずつ教えれば必ず越えられます。

作文が書けない子と一緒に、書くことを親子で考えている様子
👨‍🏫 樋口万太郎先生(中部大学 現代教育学部 准教授/元小学校教員・算数教育の研究者)

私の専門は算数ですが、「どこで止まっているか」を見てあげる——私が「見取り」と呼んでいるこの関わりは、教科を問いません。作文もまったく同じです。書くネタが浮かばずに止まっているのか、順番(構成)で迷っているのか、書き出しの一行なのか、それとも原稿用紙の使い方なのか。「作文が書けない」とひとまとめに見えても、実際に止まっているのは、たいてい一か所だけです。そこを見つけて、その一段だけを手伝ってあげる。全部を一度に教えようとしないことが、作文では特に大切です。

まずは「どこで止まっているか」を見てあげる

お子さんの手が止まったら、いきなり「こう書きなさい」と教える前に、そっと聞いてみてください。「今日、いちばん心に残ったことって何だった?」。ここでスッと出てくるなら、①のネタはあります。止まっているのは構成か書き出し。逆に「何もない」と黙ってしまうなら、まだ①の“ネタを掘る”段階かもしれません。おすすめの順番は、①話しながらネタを見つける → ②「はじめ・なか・おわり」に並べる → ③書き出しの型で最初の一行を書く → ④原稿用紙のルールは最後に整える、という流れです。「見取り」で止まっている場所が分かれば、やみくもに全部を手伝う必要はなくなります。今日はその一段だけ、一緒に越えれば十分です。

作文の書くネタを親子のインタビューで引き出している様子

前提を整える——「話してから書く」と「早めに始める」

書き方のコツに入る前に、家庭の土台を少しだけ整えておくと、進み方がまるで変わります。

  • いきなり書かせない。まず話す:話せたことは、そのまま書けます。書く前に、まず口で言ってみる時間をつくるだけで、手が止まりにくくなります。
  • 親は「書いてあげる人」ではなく「聞き役」に:正解を教えるより、質問して子の言葉を引き出す。答えは、子どもの中にすでにあります。
  • 締め切り直前に一気に、をやめる:作文は思い出す・選ぶ・並べるに時間がいります。夏休みの前半〜中盤に一度書いておくと、追い込みの苦しさが消えます。
  • 1日に全部やろうとしない:「今日はネタ探しだけ」「明日は並べるだけ」と分けるだけで、気持ちがぐっと軽くなります。

今日から試せる、作文の書き方7ステップ

全部を一度にやろうとしなくて大丈夫。お子さんが止まっている場所に合わせて、必要なステップから試してみてください。

ステップ 01

まず「話す」——親子でインタビューする

いきなり書かせず、親が質問役に。「何がいちばん楽しかった?」「そのとき、どう思った?」。子が話したことをそのままメモすれば、それがもう作文の材料です。話せた子は、書けます。

ステップ 02

ネタは「体験」から掘る

特別な出来事でなくて大丈夫。「うれしかった」「びっくりした」「くやしかった」——気持ちが動いた場面こそ、いちばんの作文のネタです。旅行より、身近な一日の中に宝物はあります。

ステップ 03

「はじめ・なか・おわり」の型に並べる

はじめ=いつ・どこで・何をしたか/なか=いちばんの場面と、その時の気持ち・したこと/おわり=考えたこと・これからどうしたいか。この3つの箱に、話したことを振り分けるだけです。

ステップ 04

書き出しは「会話・場面・数字」から始める

「1行目が書けない」の特効薬。セリフ(「やった!」)から始める、印象的な場面から始める、「私は3回転びました」と数字から始める。型を1つ知るだけで、最初の一歩が軽くなります。

ステップ 05

メモを「並べ替える」だけで文章になる

インタビューで書きためたメモを、はじめ・なか・おわりの順に並べ替える。順番が決まれば、あとはメモをつないで文にするだけ。ゼロから考えるより、ずっとラクに進みます。

ステップ 06

一文を「短く」する

「〜して、〜して、〜で」と続くと、子も大人も迷子に。一つの文に一つのことだけ。「そして」を減らして、短く区切る。それだけで、ぐっと読みやすい作文になります。

ステップ 07

直しは“気持ち”を尊重し、誤字は最後にサッと

書けたら、まず「自分の言葉で書けたね」と中身を認める。誤字や原稿用紙のルールの直しは、いちばん最後に軽く。赤ペンだらけにすると、「書くのがこわい」になってしまいます。

作文で身につく力と、学校での位置づけ

「作文なんて、そんなにがんばらせる必要ある?」と感じる日もあるかもしれません。でも、体験を思い出し、伝えたいことを選び、順番に並べて言葉にする——この一連の作業は、じつは思考力そのものを育てています。実際、小学校の国語では「書くこと」が指導内容の一つの領域として位置づけられ、「題材を決め、集めた材料から伝えたいことを明確にする」といった段階が指導事項として示されています(出典:文部科学省「小学校学習指導要領解説(国語編)」)。ここで大切なのは、学校でも作文は「題材を決める→材料を集める→整理する」という段階を追って指導されている、ということ。つまり、この記事のステップも、けっして特別な近道ではなく、学びの流れにそったものなのです。だからこそ、一足飛びに「上手な作文」を求めず、止まっている一段を一緒に越えていく——それで十分に力はついていきます。

「まだうまく書けない」でも焦らなくて大丈夫

作文は、学年が上がるにつれて少しずつ書けるようになっていくものです。低学年なら、原稿用紙の半分や数行でも立派な作文。「たくさん・上手に」を最初から求めなくて大丈夫です。今年うまく書けなくても、それでこの子の国語の力が決まるわけではありません。むしろ、作文をきっかけに「書くのはいやなもの」と感じさせないことのほうが、ずっと大切です。親が全部お膳立てして“きれいな作品”を仕上げるより、たどたどしくても「自分で書けた」という感覚が残るほうが、来年のその子を支えます。周りの子の完成度と比べて焦る必要はありません。ネタを一つ話せた、書き出しの一行が書けた、短い文でつなげられた——その小さな一歩を、どうか一緒に喜んであげてください。書けるようになるのは、その積み重ねの先です。夏休みは、その積み重ねにじっくり付き合える、貴重な時間です。

やりがちだけど逆効果になりやすいNG

よかれと思っての関わりが、かえって「作文ぎらい」を強めてしまうこともあります。責める意味ではなく、「知っておくと楽になる」ものとして読んでください。

  • 親が言い回しを全部決めてしまう:仕上がりはきれいでも、子には何も残りません。書くのは子、親は聞き役・質問役に徹しましょう。
  • 正しい日本語に直しすぎる:赤ペンだらけは「自分の言葉はダメなんだ」というメッセージに。直しは最後に軽く、が鉄則です。
  • 「もっと詳しく」「もっと長く」と量を求める:長さより「自分の言葉があるか」。マス埋めが目的になると、中身のうすい文章になりがちです。
  • 「何かないの?」とネタだけをせかす:質問が漠然としていると、子は固まります。「誰と?」「どう思った?」と、具体的に一つずつ聞くのがコツです。
  • 締め切り直前に一気にやらせる:疲れと焦りで、いちばん書けなくなります。ネタ探しだけでも早めに、が結局の近道です。

がんばっているのは、お子さんだけじゃない

ここまで読んでくださったあなたは、それだけでもう十分にお子さんと向き合っています。作文は、夏休みの宿題のなかでも「親が付き合うのがいちばん大変」と言われる宿題のひとつです。ネタを一緒に探し、話を聞き出し、書けずに固まる横で言葉をかけ続ける——それは、思っている以上に骨の折れることですよね。せっかく付き合っても進まないと、こちらの気持ちもすり減っていく。その感覚は、多くの保護者が同じように味わっています。

だからどうか、「うまくサポートできない自分」を責めないでください。作文は、学校でも段階を追ってていねいに指導するほど、難しい課題です。家庭でそれを完璧にやる必要はありません。あなたが隣で「どんなことがあったの?」と一緒に思い出してくれること。その対話そのものが、お子さんにとって何よりの助けになっています。今日書けなくても、また明日でいい。夏休みのあいだにゆっくり、で大丈夫です。一行書けた日には、一緒に大きく喜んであげてください。

作文のサポートに向き合いつつ、自分の時間も大切にする保護者
一人で抱えなくて、大丈夫。一緒に、ぼちぼちいきましょう。🌱

それでも書けない・一人だと迷うときは

いろいろ工夫しても、毎日ひとりで付き合い続けるのは大変です。「この子はどこで止まっているんだろう」「どう聞けば言葉を引き出せるんだろう」——そんな悩みを、同じ立場の保護者や専門家と分かち合える場所があると、ずいぶん心が軽くなります。

「保護者の学校」は、小学生の子をもつ保護者のためのオンラインコミュニティです。中部大学 現代教育学部 准教授で算数教育の研究者・樋口万太郎先生の月2回の声かけ講座で「見取り」や具体的な関わり方を学び、家庭で小さく試し、連絡帳(実践投稿)で振り返る。この学びのサイクルを、一人ではなく仲間と一緒に回していけます。宿題に付き合う手が止まった日も、責められずに振り返れる。そんな場所です。

作文への取り組みを日々振り返る保護者の様子
中部大学 現代教育学部 准教授が講師

保護者向けオンラインコミュニティ「保護者の学校」

大学准教授で算数教育の研究者・樋口万太郎先生の月2回の声かけ講座で学び、家庭で小さく試し、連絡帳で振り返る。うまくいかない日も、一緒に振り返れる場所です。

2026年8月1日 開校|月額 5,980円(税込)

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