くり下がりのある引き算の教え方|つまずく理由と家庭でできるコツ

教科のつまずき

「13ひく8は…」とプリントの前で鉛筆が止まったまま、指を何度も折り直している我が子。何度教えても次の日には忘れていて、つい「昨日やったでしょ!」と声を荒げてしまう。そして、あとで自己嫌悪。くり下がりの引き算の教え方に悩む保護者は、本当にたくさんいます。ここは小学校の算数で最初にぶつかる大きな壁のひとつ。つまずくのは、お子さんの努力不足でも、あなたの教え方が下手だからでもありません。

くり下がりの引き算は、じつは「10のまとまりを分ける」という、大人が無意識にやっている操作を、頭の中で組み立てる必要がある単元です。だからこそ、つまずく場所を見きわめて、そこに合った手助けをすることが何より大切。この記事では、中部大学 現代教育学部 准教授で算数教育の研究者でもある樋口万太郎先生(元小学校教員)の視点も交えながら、家庭でできるやさしい教え方を、順番に整理していきます。時間のある夏休みは、この単元にゆっくり戻る絶好のチャンスでもあります。

なぜくり下がりの引き算でつまずくのか

「くり下がりができない」とひとことで言っても、止まっている場所は子どもによって違います。まずはよくある理由を分けて見てみましょう。

① 「10の分解」があいまい

くり下がりの土台は、「10は8と2」「10は6と4」のように、10をパッと2つに分けられること。ここがあやふやだと、くり下がりの計算そのものが組み立てられません。つまずきの根っこは、じつはここにあることが多いです。

② くり下がりの「意味」が見えていない

「13の一の位3から8は引けない」→「じゃあどうする?」の部分。10のまとまりをくずして使う、という操作の意味がイメージできないと、手順だけ覚えても応用がききません。

③ 筆算の「借りる」手順で混乱する

筆算になると、隣の位から10を借りてくる・借りたぶん1を減らす、という書き方が加わります。この手順が多くて、どこかで書き忘れたり、順番が入れかわったりしがちです。

④ 「大きい数から小さい数を引く」思い込み

「3−8」のような場面で、引けないはずなのに「8−3=5」と、つい大きいほうから小さいほうを引いてしまう子がいます。これは意地悪でもうっかりでもなく、それまで「大きいほうから引く」経験しかしてこなかったから。くり下がりは、その思い込みを更新する場面でもあるのです。「ここは引けないから、10をくずすんだよ」と、意味とセットで確認してあげましょう。

くり下がりの引き算の教え方を親子で一緒に練習している様子
👨‍🏫 樋口万太郎先生(中部大学 現代教育学部 准教授/元小学校教員・算数教育の研究者)

くり下がりの引き算でお子さんの手が止まったら、まず「どこで止まっているか」を見てあげてください。10を分けるところで止まっているのか、10のまとまりをくずす意味が分からないのか、それとも筆算の書き方でつまずいているのか。私はこれを「見取り」と呼んでいます。同じ「できない」でも原因はまったく別で、手助けの仕方も変わります。特に多いのが①の「10の分解」。ここが自動化していないと、その先はすべて苦しくなります。急いで先に進むより、10のまとまりに戻ってあげるほうが、結局いちばんの近道です。

まずは「どこで止まっているか」を見てあげる

お子さんが「13−8」で止まったら、いきなり答えを教えず、一つだけ聞いてみてください。「10は、8といくつに分けられる?」。ここでスッと「2」と出るかどうかで、①でつまずいているのかが分かります。もし10の分解であやしければ、くり下がりの練習の前に、10の分解そのものに戻るのが正解です。逆に10の分解はできるのに答えが出ないなら、②や③の手順の話。つまずきの場所が見えれば、かける言葉は自然と決まります。やみくもにプリントの枚数を増やす必要はありません。

すべての土台は「10のまとまり」

くり下がりでつまずく子の多くは、じつは引き算そのものではなく、その手前の「10のまとまり」の感覚が固まっていません。ここが分かっていないと、どんな解き方を教えても砂の上に家を建てるようなものです。逆に言えば、10のまとまりさえしっかりすれば、くり下がりは驚くほどスムーズになります。

たとえば「13−8」を例に考えてみましょう。13は「10のまとまり1つと、ばらの3」でできています。一の位の3から8は引けません。そこで、10のまとまりをくずして使うわけです。10から8を引くと2、そこに残っていた3をたして5。これが答えです。この「10をくずして使う」という一点が、くり下がりの正体です。ブロックで13を「10のかたまり+3個」にして並べ、実際にかたまりをくずして8個取り除いてみせると、「あ、そういうことか」と表情が変わる子が多くいます。数字だけの説明でピンとこないときは、迷わず実物に戻ってあげてください。

前提を整える——「具体物」と「スモールステップ」

くり下がりは、いきなり数字だけで教えようとすると難しい単元です。土台を少しだけ整えましょう。

  • まず手で動かす:ブロックやおはじき、10個入りの卵パックなど、目で見て手で動かせるものを使います。「10のまとまりをくずす」感覚は、実物のほうが圧倒的に伝わります。
  • 10の分解を先に固める:「10は9と1」「10は7と3」を、カードやゲームで先に自動化。ここが速くなると、くり下がりが一気に楽になります。
  • 1日数問でいい:くり下がりは1日3〜5問で十分です。数より、1問をていねいに。「できた」を毎日積むほうが力になります。

夏休みのように時間のある時期は、この「戻る」がとてもやりやすいタイミングです。学校の授業は先へ先へと進むため、一度つまずくと立ち止まって復習する余裕がなかなかありません。でも夏休みなら、あわてずに10のまとまりから積み直せます。1学期のドリルやテストを見返して、くり下がりで手が止まっている問題があれば、そこが復習のスタート地点。新しい先取りより、つまずいた1点をていねいに越えるほうが、2学期の算数がぐっと楽になります。焦らず、その子のペースで戻ってあげてください。

くり下がりの引き算をブロックを使って教える家庭学習の様子

今日から試せる、くり下がりの教え方7ステップ

全部を一度にやろうとしなくて大丈夫。お子さんのつまずきの場所に合わせて、ひとつずつ試してみてください。

ステップ 01

ブロックで「10をくずす」を見せる

13を「10のまとまり+3」で用意し、8を引くときに10のまとまりをくずして見せます。「3からは引けないから、10をくずすんだね」と、操作と言葉をセットに。

ステップ 02

「さくらんぼ計算(減加法)」でやってみる

13−8を、13を「10と3」に分けて考えます。10−8=2、その2に残りの3をたして2+3=5。10のまとまりから引くのがポイントです。

ステップ 03

もう一つの「減々法」も知っておく

13−8を、8を「3と5」に分けて、まず13−3=10、次に10−5=5と2回引く方法です。お子さんに合うほうでOK。合うやり方は子どもによって違います。

ステップ 04

「10の分解」をゲームで速くする

「10は6と?」と親が出して子どもが答える早押しゲーム。お風呂や車の中でも遊べます。ここが速くなると、くり下がり全体が軽くなります。

ステップ 05

筆算は「借りたら1を消す」を声に出す

筆算では、隣の位から10を借りたら、その位の数を1減らして書きます。「借りたから、ここは1つ減らす」と声に出しながら書くと、書き忘れが激減します。

ステップ 06

「答えを予想」してから解く

「13−8だから、答えは5より大きい?小さい?」と先に見当をつけます。数の大きさの感覚が育ち、大きくずれた答えに自分で気づけるようになります。

ステップ 07

「ママに説明してくれる?」と言ってもらう

解けたら、どう考えたかを言葉で説明してもらいます。人に説明できたら、本当に分かった証拠。うまく言えなくても、どこまで分かっているかが見えてきます。

やりがちだけど逆効果になりやすいNG

よかれと思っての関わりが、かえって苦手意識を強めてしまうこともあります。責める意味ではなく、「知っておくと楽になる」ものとして読んでください。

  • 「昨日やったでしょ!」と責める:一度でしみ込む単元ではありません。忘れて当たり前、と構えるほうが、親子とも楽になります。
  • いきなり数字だけで教える:ブロックなどの具体物を飛ばすと、意味がイメージできません。遠回りに見えて、手で動かすのが近道です。
  • やり方を1つに強要する:減加法・減々法、どちらでも正解です。子どもに合わないほうを押しつけると、混乱してしまいます。
  • スピードを求める:最初は遅くて当たり前。速さより「意味が分かっているか」を大事にしましょう。速さは後からついてきます。
  • 長時間ねばらせる:疲れた状態での1問は、苦手意識だけを残します。「今日はここまで、よく頑張ったね」で切り上げる勇気も大切です。

がんばっているのは、お子さんだけじゃない

ここまで読んでくださったあなたは、それだけでもう十分にお子さんと向き合っています。同じところを何度も、というのは、教えるほうも本当に骨が折れますよね。忙しい合間に付き合って、なかなか進まないと、こちらの気持ちもすり減っていく。その感覚は、多くの保護者が同じように味わっています。

だからどうか、「うまく教えられない自分」を責めないでください。くり下がりは、学校の先生も時間をかけてていねいに扱う単元です。家庭でそれを完璧にやる必要はありません。あなたが隣で「一緒に考えよう」といてくれること。それ自体が、お子さんにとって何よりの安心です。今日できなくても、また明日でいい。夏休みのあいだにゆっくり、で大丈夫です。

それに、今くり下がりに時間がかかっていても、それでこの先の算数が決まってしまうわけではありません。10のまとまりの感覚は、遊びのなかでも、買い物のおつりの場面でも、少しずつ育っていきます。焦って詰め込むより、「10って便利だね」という感覚を楽しく積み重ねるほうが、結果的に力になります。できた日は一緒に喜び、できない日はあっさり切り上げる。その積み重ねが、半年後、一年後のお子さんを支えます。数字の速さより、「わかった!」の笑顔を大事にしてあげてください。

くり下がりの引き算の教え方に向き合いつつ、自分の時間も大切にする保護者
一人で抱えなくて、大丈夫。一緒に、ぼちぼちいきましょう。🌱

それでも不安・一人だと迷ってしまうときは

「つまずきの場所を見てあげよう」と言われても、毎日となると難しいですよね。そもそも、どこで止まっているのかを見取るには、少しコツと練習がいります。そんなとき、同じように悩む保護者と学び合いながら、専門家の視点を借りられる場所があると、ずいぶん心が軽くなります。

「保護者の学校」は、小学生の子をもつ保護者のためのオンラインコミュニティです。中部大学 現代教育学部 准教授で算数教育の研究者・樋口万太郎先生の月2回の声かけ講座で「見取り」や具体的な関わり方を学び、家庭で小さく試し、連絡帳(実践投稿)で振り返る。この学びのサイクルを、一人ではなく仲間と一緒に回していけます。うまくいかない日も、責められずに振り返れる。そんな場所です。

くり下がりの引き算の悩みをオンラインで学び合う保護者の様子
中部大学 現代教育学部 准教授が講師

保護者向けオンラインコミュニティ「保護者の学校」

大学准教授で算数教育の研究者・樋口万太郎先生の月2回の声かけ講座で学び、家庭で小さく試し、連絡帳で振り返る。うまくいかない日も、一緒に振り返れる場所です。

2026年8月1日 開校|月額 5,980円(税込)

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