返ってきたテストの答案に並ぶ、赤い×。数字を見たしゅんかん、胸のあたりがきゅっとして、「どうしてこんな点数なの」と言葉が出そうになる——そんな経験は、きっとあなただけではありません。テストの点数が悪いと、まるで自分が試されたように、親のほうまで気持ちが沈んでしまうものです。でも、それはあなたが子どもを大切に思っているからこそ。決して、あなたの育て方のせいでも、お子さんの能力が足りないからでもありません。
大事なのは、点数という「結果」だけを見て一喜一憂するのではなく、その数字の“裏”に何があったのかを、お子さんと一緒に見てあげることです。同じ「悪い点」でも、なぜその点になったのかは一人ひとり違います。そこを見ずに数字だけで叱ってしまうと、いちばん手伝ってあげたい“つまずき”が見えなくなってしまうのです。この記事では、中部大学 現代教育学部 准教授で算数教育の研究者でもある樋口万太郎先生(元小学校教員)の「見取り」の視点も交えながら、テストの点数が悪いときに親ができる声かけと関わり方を、やさしく整理していきます。1学期のテストがひととおり返ってくる夏休みは、点数に追われず、落ち着いて見直せる絶好の機会です。
なぜ点数が悪いと親まで落ち込むのか——点数の“裏”を見てあげる
テストの点数が悪いと、つい「勉強不足」の一言で片づけたくなります。でも、同じ低い点数でも、止まっている場所は子どもによってまったく違います。よくある“裏側”を、4つに分けて見てみましょう。
① ケアレスミス——分かっているのに落とした
答えの写しまちがい、単位のつけ忘れ、問題の読みちがい。じつは理解できているのに、うっかりで点を落としているケースです。ここを「分かっていない」と誤解して勉強量を増やしても、なかなか改善しません。ミスの“種類”を一緒に見てあげることが先です。
② 理解が追いついていない——そこでつまずいている
特定の単元だけ点が低いなら、その部分の理解が止まっているのかもしれません。これは叱って解決することではなく、「どこで分からなくなったか」をたどってあげる場面。点数の低さは、むしろ“ここを手伝って”というサインです。
③ 時間が足りなかった——最後まで解けなかった
後半が丸ごと空欄なら、実力ではなく時間配分の問題かもしれません。解ければ解けたのに、間に合わなかった。この場合は「解く力」ではなく「進め方」を一緒に工夫すればよく、本人の理解度とは切り離して見てあげたいところです。
④ 緊張・自信のなさ——本番で力を出せなかった
家ではできるのに、テストになると頭が真っ白に。「また悪い点だったらどうしよう」という不安が、実力にふたをしてしまうこともあります。ここで親が点数を責めると、不安がさらに強まり、悪循環に。まずは気持ちをほぐしてあげることが、点数への一番の近道になります。

点数は、あくまで“結果”です。大事なのは、その子がどこで止まったのかを一緒に見てあげること。点数を責めても、止まった場所は一ミリも動きません。私はこの、どこでつまずいているかを見きわめる関わりを「見取り」と呼びます。同じ40点でも、ケアレスミスで落としたのか、理解が追いつかなかったのか、時間が足りなかったのか——中身はまるで違います。答案は、責めるための通知表ではなく、次の一歩を教えてくれる“地図”です。数字ではなく、その裏にある道すじを、どうか一緒にたどってあげてください。
点数を“見取る”には、見る順番がある
答案を手にすると、つい×の数から目が行きます。でも、点数を責める前に見てほしい順番があります。①まず、返ってきた子の気持ちを受け止める → ②親子で落ち着いて答案を眺める → ③どこで止まったか(さきほどの4つ)を分類する → ④次にできる小さな一歩を決める。この順番で見ていくと、「悪い点」が「次への手がかり」に変わります。いきなり「なんでこんな点なの」から入ると、子どもは心を閉じてしまい、いちばん知りたい“止まった場所”が見えなくなってしまうのです。たとえば、ケアレスミスが多い子に「もっと勉強しなさい」と言っても、必要なのは勉強量ではなく見直しの習慣。時間が足りなかった子に理解不足だと決めつければ、本人は「分かっているのに」とやる気を失います。分類してみて初めて、かける言葉も、手伝い方も、正しく選べるのです。急がば回れで、まずは気持ち、それから中身。順番を守るだけで、家庭の空気はずいぶん変わります。

声かけの前に——親の心の前提を整える
よい声かけは、親の気持ちが整っていてこそ出てきます。答案を見る前に、こんな前提を思い出してみてください。
- 点数を見る前に、ひと呼吸おく:カッとなったまま口を開かない。「まず深呼吸」と決めておくだけで、最初のひとことが変わります。
- 答案は“通知表”ではなく“地図”:責める材料ではなく、次にどこを手伝えばいいかを教えてくれるもの、ととらえ直します。
- 「できたところ」に先に目を向ける:×より先に○を数える。土台があることを、親も子も確認してから中身に入ります。
- 夏休みは“見直し”の好機と考える:1学期のテストがそろう今は、点数に追われず落ち着いて振り返れる貴重な時期です。
点数が悪かったとき、今日からできる声かけ7つ
全部を完ぺきにやろうとしなくて大丈夫。お子さんの様子と、あなた自身の気持ちに合わせて、できそうなものからひとつ試してみてください。
まず点数より、子どもの気持ちに寄り添う
「がんばったね」「ここまでよく持って帰ってきたね」。点数の前に、まずは向き合ったことをねぎらう。安心できて初めて、子どもは答案を一緒に見る気持ちになれます。
「なんでこの点数?」を封印する
問い詰める「なんで」は、理由を聞いているようで、じつは子ども自身を責めています。「どこが難しかった?」に言いかえるだけで、子どもは自分から話しはじめます。
間違い直しを“犯人さがし”でなく“宝さがし”に
「ここがダメ」ではなく、「お、伸びしろ発見!」。まちがいは“次に点が伸びる場所”という宝。一緒に見つけるゲームにすると、直しがぐっと前向きになります。
他人や兄弟と、くらべない
「お兄ちゃんはできたのに」は、いちばん効かない言葉です。くらべる相手は他人ではなく、“この前のこの子”。過去の本人との比較だけを、そっと言葉にします。
できたところを、先に見る
「この計算、ぜんぶ合ってる」「字がていねいだね」。○や良かった点を先に声にする。土台を認められると、×の直しにも安心して向かえます。
次にできる“小さな一歩”を一緒に決める
「次は見直しを1回する」など、今日からできる小さな行動をひとつだけ決めます。大きな目標より、手が届く一歩のほうが、子どもは動けます。
親の不安を、子どもにぶつけない
「このままで大丈夫なの」という焦りは、あなたの不安であって、子どもの課題ではありません。心配は子ではなく、パートナーや仲間へ。子には安心を渡します。
点数を上げたい気持ちが、空回りするとき
「なんとかしてあげたい」という思いが強いほど、ドリルを増やしたり、口出しが多くなったりして、かえって子どものやる気を削いでしまうことがあります。じつは、点数を直接あげようと親が力むほど、子どもは「勉強=叱られること」と感じて遠ざかっていく——これはよくある空回りです。そんなときは、いったん“点数”から目を離してみてください。大切なのは、次のテストの数字ではなく、「まちがえても一緒に見直せる」という関係そのもの。答案を安心して見せられる相手がいる子は、まちがいを隠さず、自分から直そうとするので、長い目で見れば必ず伸びていきます。急いで一点を追うより、見直せる関係を育てる。それが、遠回りに見えていちばん確かな道です。1学期分をまとめて振り返れる夏休みは、その関係づくりにぴったりの時間です。
「今回は悪かった」でも、焦らなくて大丈夫
一枚のテストの点数は、その日の、その単元の、ほんの一場面のスナップショットにすぎません。そこでよくない数字が出ても、お子さんの価値も、これからの可能性も、なにひとつ決まりません。今できることは、その一枚から「どこで止まったか」を見つけて、小さな一歩を一緒に決めること。それだけで十分です。点数に一喜一憂して親子で疲れてしまうより、「またやり直せばいい」と笑って言えるほうが、次のテストへの力になります。むしろ、悪かったテストほど「どこを手伝えばいいか」を教えてくれる、ありがたい一枚。満点の答案からは学べないことが、そこにはたくさん詰まっています。夏休みのように、時間にゆとりがある時期は、点数に追われずに“見直しグセ”を育てる絶好のチャンス。「あのテスト、いっしょに宝さがししてみようか」——そんな軽やかな一言から、始めてみてください。子どもは、親のまなざしが変わると、驚くほど素直に答案を開いてくれます。
やりがちだけど逆効果になりやすいNG
よかれと思っての関わりが、かえって子どもを勉強から遠ざけてしまうこともあります。責める意味ではなく、「知っておくと楽になる」ものとして読んでください。
- 点数だけを見て叱る:数字を責めても、止まった場所は動きません。まず中身を一緒に見るほうが、次につながります。
- 兄弟や友だちとくらべる:「〇〇ちゃんは」は自信を折るだけ。くらべるなら、過去のその子とだけにしましょう。
- ごほうびや罰で点を釣る:「100点でゲーム」「悪かったら禁止」は、点のための勉強になりがち。関心が“学び”から離れてしまいます。
- 親が代わりに落ち込みすぎる:親のため息は、子には「がっかりさせた」という重荷に。心配は見せすぎないほうが、子は動けます。
- その場でドリルを増やす:点数への焦りで量を足すと、逆効果に。まず“どこで止まったか”を見てからで十分間に合います。
がんばっているのは、お子さんだけじゃない
ここまで読んでくださったあなたは、それだけでもう十分にお子さんと向き合っています。返ってきた答案の点数に、子ども以上にドキドキして、一喜一憂して、気づけばぐったり——その疲れは、あなたが真剣に子育てをしている証拠です。悪い点を見ると、まるで自分の育て方を採点されたような気持ちになる。その感覚は、多くの保護者が同じように抱えています。
だからどうか、点数で心をすり減らす自分を責めないでください。テストは、お子さんだけでなく、あなたの心もそっと揺らします。悪い点を見て動揺するのは、あなたが冷たいからでも、期待しすぎだからでもありません。ただ、まっすぐに子どもの未来を思っているからこそなのです。だからこそ、点数から少し距離をとって、「がんばったね」と子どもにも、そして自分自身にも言ってあげてほしいのです。一枚のテストで、あなたの価値も、親としての合格点も、決して測られません。今日うまく声をかけられなくても、また明日でいい。夏休みのあいだに、ぼちぼちで大丈夫です。深呼吸をして、まずはあなた自身をいたわることから、始めてみてください。

一人で抱えなくて、大丈夫。一緒に、ぼちぼちいきましょう。🌱
それでも心がざわつく・一人だと迷うときは
いろいろ分かっていても、目の前の答案を前にすると、つい言葉がとがってしまう。「どう声をかければよかったんだろう」「この点、放っておいて大丈夫かな」——そんな迷いを、同じ立場の保護者や専門家と分かち合える場所があると、ずいぶん心が軽くなります。
「保護者の学校」は、小学生の子をもつ保護者のためのオンラインコミュニティです。中部大学 現代教育学部 准教授で算数教育の研究者・樋口万太郎先生の月2回の声かけ講座で「見取り」や具体的な関わり方を学び、家庭で小さく試し、連絡帳(実践投稿)で振り返る。この学びのサイクルを、一人ではなく仲間と一緒に回していけます。テストの点数に落ち込んだ日も、責められずに振り返れる。そんな場所です。


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大学准教授で算数教育の研究者・樋口万太郎先生の月2回の声かけ講座で学び、家庭で小さく試し、連絡帳で振り返る。うまくいかない日も、一緒に振り返れる場所です。
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