宿題をやらない子への声かけ|「早くしなさい」の前にできる3つのこと

お役立ち情報

15時半、玄関にランドセルが落ちる音がして、すぐにテレビがつく。「宿題は?」と聞くと「あとでやる」。しばらく待っても動かない。気づけばまた「早くしなさい」と言ってしまう——。

夜、子どもが寝たあとにスマホを開いて、「また言ってしまった。怒りたいわけじゃないのに」とため息をつく。そんな夜を過ごしていませんか。

この記事は、宿題をやらない子への声かけに悩む小学生の保護者の方へ書いています。最初にお伝えしたいのは、あなたを責めるための記事ではない、ということです。むしろ、毎日ちゃんと向き合おうとしているあなたは、もう十分がんばっています。この記事では、「早くしなさい」が効かない理由、宿題をやらない5つの原因、声かけの前に整えたい環境、そして今日から試せる具体的な声かけを、中部大学 現代教育学部 准教授で、算数教育を専門とする樋口万太郎先生の視点を交えてお伝えします。学校現場と大学の研究、その両方を知る立場からのアドバイスです。読み終えるころには、明日の夕方が少しだけ軽くなっているはずです。

「早くしなさい」が効かないのは、あなたのせいではありません

「勉強しなさい」「早くしなさい」と言っても、子どもはなかなか動きません。何度言っても効かないと、「私の言い方が悪いのかな」と自分を責めてしまいがちです。

でも、命令の言葉が効きにくいのには理由があります。人には「自分のことは自分で決めたい」という気持ちがあり、指示や命令をされると、たとえ正しい内容でも反発したくなります(心理学では「心理的リアクタンス」と呼ばれます)。「早くしなさい」は、子どもにとっては「今やりたくない気持ち」を強める方向に働きやすい言葉なのです。大人でも、「早くやって」と急かされると、かえってやる気がしぼんでしまう経験はないでしょうか。

しかも厄介なのは、知識としては「命令はよくない」とわかっていることです。インスタで保存した声かけの投稿も、ママ友から聞いた話も、頭の中にはある。それなのに、子どもの前に立った瞬間、全部消えてしまう。知っていることと、実際にできることの間には、大きな溝があります。この溝は、あなたの努力不足ではありません。

宿題をやらない子の「5つの原因」——どこで止まっているのか

子どもがどこで止まっているかを見取る親

宿題をやらない子どもを見ると、つい「やる気がない」と受け取ってしまいます。でも実際には、やる気そのものの問題ではなく、どこかで「止まっている」ことがほとんどです。まずは、その“止まっているポイント”を知ることが、声かけを変える第一歩になります。代表的な原因を5つに整理しました。

① 問題が難しく、苦手意識がある

わからない問題を前にすると、子どもは自尊心を守るために「やりたくない」「あとで」という態度をとりがちです。白紙で出す、「宿題ないよ」と言う——こうした行動は、サボりではなく「できない自分を見せたくない」というサインのことがあります。

② 量が多く見えて、始められない

プリントやドリルの全体を見た瞬間に「こんなにあるの、無理」と感じて、手が止まってしまう子は多いです。実際の量以上に「多く見える」ことが、最初の一歩を重くします。

③ 何から手をつければいいか、わからない

「宿題やりなさい」と言われても、やる順番を決められずにフリーズしてしまう。大人でも、やることが山積みだと動けなくなるのと同じです。

④ 周りが気になって、集中できない

テレビがついている、ゲーム機が視界に入る、きょうだいが遊んでいる——こうした環境では、大人でも集中は続きません。やる気ではなく、環境の問題であることは意外と多いのです。

⑤ そもそも「やる意味」を感じていない

「なぜやるのか」が腑に落ちていないと、宿題は“やらされるもの”のままです。「将来のため」という言葉は、子どもにとっては遠すぎて響きにくいことも覚えておきたいポイントです。

👨‍🏫 樋口万太郎先生(中部大学 現代教育学部 准教授/元小学校教員)

子どもの学びは「見取る(みとる)」ことが大切です。見取るとは、「この子は今、どこで止まっているんだろう」と観察すること。「なんでやらないの?」ではなく「どこで止まってる?」と見ようとする——たったこれだけの視点の切り替えで、かける言葉は変わっていきます。

声かけの前に整えたい「環境」と「時間」

どんなに良い声かけをしても、環境が整っていないと効果は半減します。声かけを変えるのと同じくらい、環境と時間を整えることが大切です。

「いつ・どこで」やるかを、子どもと決めておく

宿題は、その場の気分で始めようとすると腰が重くなります。「帰ってすぐ」「おやつのあと」「習い事の前」——お子さんのタイプに合わせて、いつやるかを一緒に決めておきましょう。決めるときに「どっちがいい?」と本人に選ばせると、自分で決めたぶん動きやすくなります。

リビング学習と、視界のノイズを減らす

小学生のうちは、静かすぎる子ども部屋より、程よく生活音のあるリビングのほうが集中できる子が多いといわれます。ポイントは、机の正面にテレビやゲームが入らないようにすること。「見えるところに誘惑がある」だけで、集中力は大きく削られます。

切り替えのシグナルを決める

「長い針が8になったら始めよう」のように、時計や日課を“合図”にすると、切り替えがスムーズになります。「早くしなさい」という言葉のプレッシャーではなく、決めたシグナルが子どもを動かしてくれます。

今日から試せる、宿題をやらない子への声かけ7つ

最初の1問だけ一緒に取り組む声かけ

環境が整ったら、いよいよ声かけです。とはいえ、忙しい夕方に全部を意識するのは難しいもの。ここでは宿題をやらない子への声かけを7つ紹介しますが、全部やろうとしなくて大丈夫。まずは1つだけ、試してみてください。

声かけ 01

「何から始める?」と、子どもに選ばせる

「宿題やりなさい」という命令ではなく、「何から始める?」という問いに変えてみます。人は、自分で決めたことのほうが動きやすいもの。子どもが「じゃあ算数から」と自分で口にすると、その一言が小さなスイッチになります。

声かけ 02

「最初の1問だけ、一緒にやってみようか」

宿題全体を前にすると、量に圧倒されて動けなくなります。そこで「全部」ではなく「最初の1問だけ」に区切ってみます。始めさえすれば、あとは進みやすくなるもの。ハードルを「これならできそう」と思える大きさまで下げてあげるのがコツです。

声かけ 03

行動を「実況」してほめる

「えらいね」だけでなく、「机に座れたね」「筆箱を出せたね」と、子どもがした行動をそのまま言葉にします。結果ではなく、動き出した“その瞬間”を認めることで、次の一歩が出やすくなります。

声かけ 04

具体的に、努力をほめる

「この『あ』の字、ていねいに書けてるね。たくさん練習したもんね」のように、どこがよかったかを具体的に伝えます。ぼんやりほめるより、「見てもらえている」という安心感が育ちます。

声かけ 05

終わったあとに、「次の一手」を一緒に考える

できなかったことを責めるのではなく、「次はどうする?」と一緒に振り返ります。「ここは難しかったね。明日は先生に聞いてみる?」——次につながる声かけが、子どもの前向きさを支えます。

声かけ 06

「早くしなさい」が出そうになったら、2秒だけ待つ

これは声かけというより、“言わない”練習です。「早くしなさい」が口から出そうになったら、まず2秒だけ待ってみる。待つというのは、何もしないことではありません。「この子は今どこで止まっているんだろう」と見るための、短い時間です。

声かけ 07

「ママも隣で◯◯するね」と、並走を示す

「あなたは宿題、ママはこの書類やるね」と、同じ空間で一緒に取り組む姿勢を見せると、子どもは「ひとりでやらされている」感覚がやわらぎます。見張るのではなく、隣で並走するイメージです。

完璧にできなくてかまいません。うまくいかない日があっても大丈夫。「今日は2秒待てた」——それだけで、十分な一歩です。

逆効果になりやすい、NGな声かけ

よかれと思ってかけた言葉が、かえって子どものやる気を下げてしまうこともあります。宿題をやらない子への声かけで、できれば避けたいのは次の5つです。

  • 感情的に叱りつける:強い口調で叱ると、子どもの脳は「怖い」でいっぱいになり、肝心の勉強内容が入らなくなります。
  • 「〜しないとゲーム禁止」と脅す:罰で動かすと、宿題そのものが「イヤなもの」として記憶され、自分から向かう気持ちが育ちません。
  • きょうだいや友だちと比べる:「お兄ちゃんはできたのに」は、本人の自尊心を傷つけ、「どうせ自分は」という気持ちを強めてしまいます。
  • 「宿題やったの?」と何度も確認する:詰問のように繰り返されると、子どもは責められている気持ちになり、机から遠ざかってしまいます。
  • 宿題中に、細かく口を出す:「そこ違う」「もっとていねいに」と横から言い続けると、集中が途切れ、やる気もしぼみます。まずは最後まで見守りましょう。

どれも、ついやってしまいがちなものばかりです。「やってしまった」と気づいたら、「さっきは言いすぎたね」と素直に伝えれば大丈夫。その姿こそ、子どもにとって何よりの学びになります。

それでも動かないときは、特性を考える視点も

いろいろ試しても宿題への抵抗が極端に強い、集中が5分と続かない、極度に不注意が目立つ——そんなときは、本人の努力や親の関わりだけの問題ではなく、発達の特性(ADHD・LD など)が背景にある可能性もあります。これは「できない子」という意味ではまったくありません。その子に合った関わり方や支援があれば、ぐっと取り組みやすくなります。

気になる場合は、一人で抱え込まず、担任の先生やスクールカウンセラー、地域の相談窓口に話してみてください。「学年を少し遡って、わかるところから積み直す」だけで、苦手意識がほどけることもあります。

いちばん大切なのは、あなた自身が抱え込まないこと

ここまで原因や声かけを紹介してきましたが、いちばん大切なのは、保護者であるあなたが一人で抱え込まないことです。

子育てに、常に正解の言葉を出せる人はいません。イライラして言いすぎてしまう日があって当然です。大事なのは、完璧を目指さないこと。そして、頼れる人や場所を持っておくことです。うまくいかない日に「うちだけじゃないんだ」と思えるだけで、心はずいぶん軽くなります。

それでも、明日にはまた元に戻るかもしれません

正直にお伝えすると、今日この記事を読んで1回声かけを変えても、明日にはまた「早くしなさい」が出てしまうことがあります。それが普通です。

なぜなら、関わり方は「知識」だけでは変わりにくいからです。頭で理解しても、目の前に子どもがいる場面では、いつものクセが出てしまう。意志の力だけでどうにかしようとすると、続かずに自己嫌悪に戻ってしまいます。

大事なのは、正解の言葉を覚えることではなく、試して・振り返って・また試すというサイクルを回すことです。そして、このサイクルは、一人で続けるのがとても難しい。だからこそ、同じ悩みを持つ人と一緒に、少しずつ積み重ねていく場が役に立ちます。

保護者向けオンラインコミュニティ「保護者の学校」では、中部大学准教授・樋口万太郎先生の月2回の声かけ講座で学び、家庭で小さく試し、連絡帳(実践投稿)で振り返るというサイクルを、先生や仲間と一緒に回していきます。「動かなかったのは失敗じゃない。待てたことが今週の前進です」——そんなふうに、うまくいかない日も一緒に振り返れる場所です。

一人で抱えなくて、大丈夫。一緒に、ぼちぼちいきましょう。🌱
中部大学 現代教育学部 准教授が講師

保護者向けオンラインコミュニティ「保護者の学校」

大学准教授で算数教育の研究者・樋口万太郎先生の月2回の声かけ講座で学び、家庭で小さく試し、連絡帳で振り返る。「動かなかったのは失敗じゃない。待てたことが今週の前進です」——うまくいかない日も、一緒に振り返れる場所です。

2026年8月1日 開校|月額 5,980円(税込)

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