学期末、子どもが持ち帰った通知表をそっと開く瞬間。「よくできる」の数を数えて一喜一憂したり、「がんばりましょう」の文字に胸がざわついたり。つい「これ、どうしたの?」と口に出してしまって、子どもの表情が曇る——そんな経験、ありませんか。通知表は、保護者にとってもドキドキする一枚です。
でも、はじめにお伝えしたいことがあります。通知表は、順位でも、まして「できる子・できない子」の判決でもありません。その学期の、ある時点での成長の途中経過です。そして、数字そのものより、それを見てどう声をかけるかで、子どもの“次”は大きく変わります。
この記事では、元小学校教員で教育研究者の樋口万太郎先生の視点も交えながら、通知表が本当は何を表しているのか・「がんばりましょう」を見たときの声かけ・所見の読み方まで、教える側の立場からやさしく解説します。
通知表の評価は、その学期の“ある時点”の姿にすぎません。私たち先生は、減点して「ダメ」と言っているのではなく、「次に伸ばせるところ」を示しているんです。だからご家庭では、結果を責めるよりも「じゃあ、どこを一緒にやってみようか」と、次の一歩に変えてあげてほしい。それだけで、子どもにとって通知表は“こわい紙”ではなくなります。
通知表は、そもそも何を表している?
今の小学校の通知表は、多くが絶対評価です。つまり、クラスの他の子と比べた順位ではなく、「その学年で身につけたい目標に、どれくらい近づいたか」を表しています。ですから「がんばりましょう」は「ダメな子」という意味ではなく、「この目標が、まだ途中」というサインなのです。
また、各教科は観点別に評価されています。「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの角度です。同じ「算数」でも、計算はできるけれど説明が苦手、ということが見えてきます。どの観点が伸びていて、どこが途中なのか——そこを読むと、家庭でのサポートがぐっと具体的になります。
「がんばりましょう」を見たときの声かけ
いちばん大事なのは、最初のリアクションです。ここで責めてしまうと、子どもは通知表を隠すようになります。次の順番で声をかけてみてください。
まず、結果より過程を認める
「ここまでよくがんばったね」と、点数ではなく取り組みをひとこと。安心できて初めて、子どもは次の話を聞けます。
「どこが難しかった?」と一緒に見る
問い詰めるのではなく、隣に座って一緒に眺める。つまずきの場所を子ども自身の言葉で話せると、それだけで前向きになります。
次の一歩を、小さく1つだけ決める
「来学期は、音読を毎日ちょっとだけやってみようか」など、無理のない1つを子どもと決める。大きな目標より、続く小さな一歩です。
やる気の引き出し方は、勉強のやる気がない小学生への声かけもあわせてどうぞ。
やりがちなNG(子どもの受け取り方)
- きょうだいや友だちと比べる:「お兄ちゃんは全部○だったのに」は、やる気ではなく劣等感を育ててしまいます。比べる相手は「前の学期のその子」だけで十分です。
- ごほうびや罰で釣る:「○が増えたら〜を買う」は一時的。目的が“物”になり、学ぶこと自体の楽しさから遠ざかります。
- 「なんでこれだけできないの」と責める:子どもは「自分はダメだ」と受け取ります。できていることに、まず目を向けましょう。
所見(先生のコメント)の読み方
通知表の中で、先生が一人ひとりに時間をかけて書いているのが所見欄です。短い文章でも、そこには担任の「見取り」——その子をどう見ているかが、ぎゅっと詰まっています。「友だちにやさしく声をかけていました」といった具体的な行動描写に注目してください。そこは先生が実際に見て、いいなと思った瞬間です。家庭でも同じ言葉で「先生も言ってたよ」とほめると、子どもの自信は大きく育ちます。
通知表を「親子の作戦会議」にする
通知表は、評価を受け取って終わりにするより、次の学期の作戦会議の材料にすると、ぐっと前向きになります。子どもと一緒に眺めながら、「次はどこを一緒にがんばろうか」を1つだけ決める。気になることがあれば、それを個人懇談で先生に相談してもいいですね。面談の準備は個人懇談で何を話す?が参考になります。
学年が上がると、通知表はどう変わる?
学年によって、通知表の見え方も少し変わります。3年生からは理科・社会が加わって教科が増え、高学年になると「主体的に学習に取り組む態度」のような、点数だけでは測りにくい観点の存在感が増していきます。だからこそ、数字の上下に一喜一憂するより、「去年の自分と比べて、どう伸びたか」を軸に見てあげてください。学年が上がるほど、結果よりも“学びに向かう姿勢”を認める声かけが、じわじわ効いてきます。
通知表を見せたがらない子への接し方
「見せて」と迫るほど、子どもは隠したくなるものです。まずは通知表そのものではなく、「どんな一学期だった?」と、“その学期”の思い出話から入ってみましょう。安心して差し出せる空気をつくるのが先です。開いたら、真っ先に「いいところ」を一つ見つけて声に出す。「ここ、○になってる!がんばったね」——この最初の一言が、次の通知表を素直に見せてくれるかどうかを、実は大きく左右します。
家庭でできる、次の学期への小さな準備
通知表は“終わり”ではなく、“次のスタート地点”です。気負わず、次の3つくらいから始めてみましょう。
- 苦手の芽は早めに:1日5分の音読や計算など、短くていいので続く形で。
- 得意はもっと伸ばす:「これ好きなんだね」と、できていることにも光を当てる。
- 生活リズムを整える:睡眠は学習の土台。夜ふかしが続くと、力は出しきれません。
まとめ
通知表は、順位でも判決でもなく、成長の途中経過です。「がんばりましょう」は「まだ途中」のサイン。数字より、それを見てどう声をかけるかで、子どもの次が変わります。まず過程を認め、一緒につまずきを見て、小さな一歩を決める。通知表を“こわい紙”ではなく“親子の作戦会議”に変えていきましょう。
最後に、もし可能なら——通知表を受け取ったとき、連絡帳や面談で先生に「一学期、ありがとうございました」の一言を添えてみてください。評価をつけるのは、先生にとっても悩みながらの作業です。家庭からの短い感謝は、次の学期、先生がその子をもう一歩ていねいに見守るきっかけになります。通知表は、子どもと家庭と先生、三者をつなぐバトンのようなもの。数字の向こうにいる“人”に目を向けると、渡し方も受け取り方も、きっと少しあたたかくなります。
通知表の“ほんとの意味”、先生に聞いてみたくありませんか?
「保護者の学校」では、保護者と先生が本音で語り合える交流会を準備中です(2025年9月末〜10月頭 開催予定)。評価の裏にある先生の想いに触れられる場をつくっています。

