「先生、なんかきらい」——お子さんのその一言に、胸がざわついたことはありませんか。あるいは、参観や連絡帳のやりとりで、あなた自身が担任の先生に「なんだか合わないな」と感じている。でも、それを口に出せば角が立つかもしれない。モンスターペアレントだと思われたくない。そんな思いで、モヤモヤを飲み込んでいる保護者の方は、実はとても多いのです。
先に、大事なことをお伝えします。「担任と合わない」と感じること自体は、決してわがままでも、あなたの心が狭いわけでもありません。人と人ですから、相性もあれば、情報のすれ違いも起きます。大切なのは、こじらせずに、子どもが安心して過ごせる状態に近づけること。そのための順番と伝え方には、コツがあります。
この記事では、元小学校教員で教育研究者の樋口万太郎先生の視点も交えながら、先生側の事情・家でまずできること・こじらせない相談の順番・モンペと思われない言い方まで、あいだに立つ立場から整理します。
正直にお話しすると、先生も人間で、完璧ではありません。気づけていないこと、うまくいっていないことも、当然あります。だからこそ、早めに、事実ベースで伝えてもらえるほうが、ずっと助かるんです。いちばんつらいのは、保護者の方が黙ったまま不信感だけがふくらんで、こじれてしまうこと。相談は「クレーム」ではなく、「この子のために一緒に考えてほしい」というサインとして、私たちは受け取っています。
「合わない」と感じるとき、何が起きている?
ひとくちに「合わない」と言っても、中身はさまざまです。指導の方針や言葉かけが子どもに合っていない場合もあれば、家庭と学校での情報のすれ違いが原因のこともあります。また、子どもは「叱られた」出来事を強く覚えていて、実際より「きらい」を大きく語ることもあります。まずは、何が起きているのかを切り分けることが、こじらせない第一歩です。先生の側にも、クラス全体を見ながらの事情があることも、頭の片隅に置いておくと、話がしやすくなります。
まず家でやること
子どもの話を、最後まで聞く
途中で「あなたにも悪いところが」と挟まず、まずは全部聞く。そのうえで「何があったか(事実)」と「どう感じたか(気持ち)」をそっと分けて整理します。子どもの安心が、いちばんの土台です。
事実をメモする
「いつ・どんな場面で・何があったか」を短くメモ。感情ではなく事実が残っていると、相談のときに冷静に、具体的に伝えられます。
家で対処できることか、切り分ける
家庭でのフォローで落ち着きそうか、学校に相談すべきことか。子どもの心の状態を最優先に、無理のない範囲を見極めます。
こじらせない相談の順番
相談には、踏むべき順番があります。ここを飛ばすと、かえってこじれてしまうことが多いのです。
- ① まずは担任の先生に直接:多くの行き違いは、本人に事実を伝えるだけで解けます。「相談させてください」と、対話の入口をつくりましょう。連絡帳での切り出し方は連絡帳の書き方・相談の例文が参考になります。
- ② 変化がなければ学年主任へ:担任と話しても難しいときは、学年主任など間に入れる立場の先生に。担任を飛び越えていきなり管理職へ行くより、角が立ちません。
- ③ それでも難しければ管理職・専門窓口へ:教頭・校長、スクールカウンセラー、必要に応じて教育委員会の相談窓口も。順を追っていることが、誠実な相談として伝わります。
直接じっくり話したいときは、個人懇談の時間も使えます。個人懇談で何を話す?もあわせてどうぞ。
モンペと思われずに伝える言い方
同じ内容でも、伝え方ひとつで受け取られ方は大きく変わります。コツは、「要求」ではなく「相談」の形にすること。「事実 → 子どもの様子 → 一緒に考えてほしい」という流れが基本です。
- いきなり「担任を変えてほしい」と結論から入る:先生も身構えてしまいます。まずは事実と、子どもの困りごとの共有から。
- 人格や指導力を否定する言い方:「先生のせい」ではなく「この場面で子どもが困っている」に置きかえると、対話になります。
- 他の保護者と結託して一斉に、という形:圧力と受け取られ、本来の相談が届きにくくなります。
「担任を変えてほしい」は叶う?
正直にお伝えすると、年度の途中で担任が変わることは、基本的にまれです。学校運営上、簡単ではないのが現実です。ただ、担任を「変える」ことだけがゴールではありません。席替えや声かけの配慮、家庭との連携の工夫など、関わり方を変えることで、子どもが安心して過ごせるようになるケースはたくさんあります。「変えてほしい」の奥にある「この子が安心して学校に行けるように」という本当の願いを、先生や学校と共有することが近道です。
それでもつらいとき
いろいろ試しても状況が変わらず、お子さんの心がすり減っているように見えるとき。ひとりで抱え込まないでください。スクールカウンセラーや、自治体の教育相談窓口など、外部の専門家に相談できる場所があります。子どもの心の安全が、何よりも優先です。
相談の前に、整えておく3つのメモ
いざ相談するとき、次の3つをメモしておくと、話が驚くほどスムーズになります。
- 事実:いつ・どんな場面で・何回くらい起きているか。
- 子どもの様子:睡眠・食欲・登校しぶりなど、家で見える変化。
- 家庭でやってみたこと:すでに試したことと、その結果。
この3点がそろっていると、相談が「感情のぶつけ合い」ではなく、「一緒に解く相談」に変わります。先生も、具体的な事実があるほど動きやすくなります。
子ども自身の力も、そっと後押し
親が動くのと同時に、子どもが「先生にこう言ってみる」と自分から一歩踏み出せると、関係は変わりやすいものです。「『○○が分からないので教えてください』って聞いてみたら?」と、家で小さな練習をしてみましょう。うまく言えたら「言えたね」と認めてあげる。担任の先生との関係は、最後はお子さん自身が主役です。親はその背中を、そっと押す役割でいられるといいですね。
あいだに立つ視点から
先生も、本当は保護者と対立したいわけではありません。同じ子を、それぞれの場所で見守っている——その前提に立てると、「合わない」の多くは、責め合いではなくすり合わせで解けていきます。あなたが飲み込んできたモヤモヤは、わがままではなく、子どもを想う気持ちの表れです。どうか、ひとりで抱えず、一歩ずつ橋をかけていきましょう。
先生の本音、聞いてみたくありませんか?
「保護者の学校」では、保護者と先生が本音で語り合える交流会を準備中です(2025年9月末〜10月頭 開催予定)。“合わない”のわだかまりを、お互いに溶かせる場をつくっています。

